医師 黒木 弘明

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二〇二四年 四月二五日(木)

綴りごと 想いごと

解決策では解決しない時もある

困ったこと、悩みごとがあると、

私たちは次に、解決策を探します。

しかし、解決策が見つかったはずなのに

問題が解決しない、なんてことも多々あります。

解決策によって問題が解決する時と、

解決策では問題が解決しない時があるのです。

 

 

例えば、

今の(ウイルス対策の)ご時世のように

止むを得ない社会事情によって

事業が危うい時は、その解決策として、

国や自治体に給付金を申請する方法があります。

不足しているお金を補う、ということですね。

これは「直接的な解決策」と言えます。

 

 

かと思えば、例えば、

ある日39度くらいの高熱が出た時に、

熱を下げる解決策として解熱剤を飲み続けるだけでは、

熱は一時的に下がったとしても、放置すると

酷い場合は気管支炎や肺炎などになって

逆に悪化してしまうかもしれません。

 

 

当たり前のことですが、熱を下げるためには、

熱の出所を見極め、それに対処しなければなりません。

これはある意味では「間接的な解決策」です。

この場合は解熱剤という「直接的な解決策」だけでは

必ずしも真の解決に結びつかないのです。

 

 

困りごと、悩みごとも、これと似ています。

悩みごとの解決策を講じているように見えても

悩みごとが何故かまた再び続いてゆく、、、

それどころか長引いていく、、、

というケースは少なくありません。

 

 

困りごとや悩みごとは、イメージでいうと、

心が発熱しているようなものです。

 

 

鋭い人は、もうお分かりですね?

悩みごと(心の発熱)があった時に

とりあえず悩みごとをかき消すための

直接的な解決策では

本当に解決したことにならない場合がある、

ということです。

 

 

例えば、会社の経営者の方にとって

顔も見たく無いほど嫌いな従業員がいるから

(理由をつけて)解雇した。

もうその従業員と私は会わなくて良いから

問題は解決した、、、と思っていても

今度は別の従業員が気に食わなくなった、、、

何人クビにしても

従業員と経営者の関係は良くならないし、

退職率は下がらない、人が定着しなくなった、、

なんてこともあり得ますよね。

 

 

ではどうするか?

そうです、悩みごと=心の発熱の出所を

よく見極める必要があるのです。

一見あなたの外にあるように見える

悩みごとの震源地は、実は、

あなたの心の中にある炎症かも知れません。

 

 

次は、熱の出所の見極め方についてです。

肺炎など体の炎症による発熱の場合は、

医療機関に行って、診察や検査を受けたうえで、

専門家の判断によって診断がつきます。

つまり、第三者の協力を仰ぐ必要があります。

 

 

では、心の発熱の場合はどうでしょう?

 

 

慣れている人であれば、心が発熱しても

自分の心の中を見つめて

悩みごとを生む、心の炎症部位を

探し当てることが出来る場合もありますが、、、

 

 

ほとんどの人は不慣れです。

 

 

自分では自分を把握していると思っていても

大事な部分を見過ごしていたり、

炎症の核心とはズレていたりするものです。

(人間は一人では完結できないのです)

 

 

ですから、肺炎による発熱と同じように

第三者の協力を得て、一緒に自分の心の中を

ゆっくりチェックしていくやり方があります。

(私の仕事はこの辺りです)

 

 

今まで自分を苦しめていた考え方、感じ方、

知らないうちに押し込めていた不満や不信、

受け容れきれない自分、見知らぬ自分、

自分でも気づかない怒りや悲しみなどが

心の不調和・心の炎症を起こす場合が沢山あります。

 

 

複雑なのは、心の炎症は肺炎などのように

レントゲンやCT、血液検査などに反映されないので

「ここが傷んでいる!」という明確な場所と

傷みの程度を客観的に掴みにくいことです。

 

 

さらに、もっと難しいことがあります。

実は、

この心の炎症・心の不調和は隠れ上手なのです。

 

 

彼らは、他ならぬ自分自身に悟られないように、

狡猾にあなたの心の中に隠れてしまっていることが

心の問題を少しだけ複雑にしているのです。

 

 

だから自分一人では見つけにくいのです。

ですから信頼できる第三者と一緒になって

自分の心を探し当てることが

解決の糸口になる場合が多いのです。

 

 

探し当てると言っても、犯人探しではなく、

本来は鬼ごっこのようなものなのです。

血眼になって探すと、かえって見つかりません。

むしろ何でも無いような処に鬼さんは居ます。

 

 

これは私のやり方ですが、

悩みごとを抱えるご本人のお話をよく聴きます。

(たったの何十分というレベルではありません)

 

 

すると、そのご本人の言葉、ご本人の弁の中に

鬼さんがちょいちょい顔を出すのです。

私はその人の心の片隅で、わざと私に見つかるように

分かりやすく隠れている鬼さんを

ヒョイとつまんで、ご本人にお見せするだけです。

 

 

そうやって鬼さんが見つかれば

ゴールまでの折り返し地点を過ぎたも同然です。

おぼろげにゴール(解決の方角)が見えてきて、

後は本人の取り組みと共に

ゆっくり悩みごとが溶けていく…

そんなケースが(私のクライアントさんでは)大半です。

 

 

そうやって

心の炎症を起こしていた鬼さんが見つかる時は、

みなさん口々にいう共通の表現があります。

 

 

「ストン!と腑に落ちました」

「頭じゃなくて、腹に落ちました」

「なんか言葉じゃ言えないけど、すごく分かります」

「ゔ〜ん、痛いです。でもそれが問題だと思います」

「今、ズシ〜ンと来ました・・・」

「なぜ涙が勝手に出るのでしょう・・・」

 

 

こういう表現が多いです。

頭や記憶の問題ではなく、体感として

心の不調和の部位が見つかった感触があるのです。

 

 

しかし、心の炎症による悩みごとと

体の炎症による発熱の対処法の違いは、

やはり本人が主体的になるかどうかです。

 

 

肺炎などの場合は、専門家の治療方針に従うことで

多くは解決して参りますが、

心の発熱は、第三者の指示に従うがままでは

解決しないことも少なくありません。

 

 

心の発熱の場合は、第三者の提案をもとに、

ご本人が、自分自身で自分の心に向き合い、

主体的に取り組まなければ

解決が見えてこない場合も多々あるのです。

 

 

ですから、心の発熱の場合は

「専門家の先生にお金と時間を払うから

後はそっちでよろしく解決しておいてね」

という手口が1ミリも通用しないのです。

(これは個人でも、集団組織でも同じです)

 

 

第三者と取り組んでも心の発熱が

なかなか解決しないケースを拝見すると、

ご本人自身がどこか逃げ腰だったり、

ご本人が第三者に甘えがちだったり、

逆に、第三者を(逃げ口実として)

不必要に怖がっていたり、

ご本人、あるいは周囲の人が焦っていたり、

急かしたり、成果を求めすぎたりするなど、

ご本人が心の炎症と向き合う環境や準備が

十分に整っていない場合がとても多いです。

 

 

このように過去の失敗例があったとしても

それも一つの過程・教訓・練習として

前向きに受け止めている人は、

もうすでに心の炎症が治まりつつある人で、

不思議なことにそういう人には、

以前よりも相性の良い第三者との出逢いが

訪れることがあるようにお見受けします。

 

 

誰しもが長い間、自分の中に抱えている

悩みごと(心の炎症)があります。

そんなものは無い!という人は

自分で気づいていない人か、自分から逃げたくて

強がりを言っている人かもしれません。

 

 

大した問題ではないけども、

以前から密かにずっと悩んでいる、、、

そんな悩みごとは、心の微熱かもしれませんし、

ものすごく落ち込むような問題は、

心の高熱かもしれません。

 

 

これは私の意見ですが、心の場合は、

微熱も高熱も重症度を表すものではなくて

中には、微熱の方が根が深いということもあります。

 

 

あなたの心の落ち込みが激しくなくても、

なんとなくのイラつきがちな自分の中に、

なんとなくぎこちない自分の中に

心の炎症が隠れていることがあります。

 

 

心の微熱が何年も、何十年も続いているのを

自分で許せずに、自分で認められずに、

微熱があるのが私の心の平熱よ!

などと言わないで下さい。

 

 

悩みごと(心の発熱)があることは

恥ずかしいことでもなんでもありません。

むしろ、人間の証です。

他人がなんと言おうとも

一生懸命に生きている人間の証左です。

それを隠すこと、そこに目を背けることの方が

恥ずかしいことなのです。

 

 

だから私は、

真剣に悩んでいる人に出逢うと

まず「諦めないで生きていること」を

賞賛します。

 

 

もしあなたに、自分の心と向き合えるチャンス

(向き合う気持ちと、第三者との出逢い)

が訪れたのであれば、ぜひその機を逃さず

やってみて下さい。他ならぬ自分のために。

 

 

そして、ゆっくりで良いので

自分を赦してあげましょう。

自分を認めていきましょう。

自分を愛していきましょう。

 

 

悩みごと(心の熱)には

直接的な解決策ではなく、

間接的な解決策が効く場合もある、

というお話でした。