医師 黒木 弘明

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二〇二四年 四月二〇日(土)

綴りごと 想いごと

怖れとの対話(1)

私は、最近よくブログの中で

「自分との対話」や「怖れ」などについて

言及しています。

9月1日のブログ「休みの目的」では、

休みとは、自分と対話するのが目的である。

そのために心身を鎮める必要があるし、

心身を鎮めて終わりではなく、

自分との対話まで歩を進めて行かなければ、

本当の意味での回復は望めない、

というようなことを書いています。

さらに9月3日のブログ「自分との対話」では、

自分との対話という作業について

大まかに三種類あると述べており、

そのうちの一つに「自分の中の怖れ」に

気付いたり、それを手放す作業が含まれる、

と書いています。

そして、9月14日のブログ「怖れとは」の中では

実際に、ストレスと怖れの違いについて、

怖れが蓄積した場合どうなるか?について

書いています。

ここまでの流れを整理しますと、

以下のようになります。

あらゆる感情や負荷で疲弊した私たちが

再起して、自分を謳歌して生きるためには、

充分な休みが必要だ。

休みとは、心身を鎮めるだけではなく、

自分と対話することに真の目的がある。

そして、自分との対話とは、

自分の中の怖れを見つけることから始まる。

さて、今日は「怖れとの対話」手法について

代表例を挙げてみようと思います。

9月14日のブログで、私は

「自分にとって不都合なことが起きた時こそ

自分(怖れ)と対話をする好機だ」と書いています。

まず「怖れとの対話」の時期ですが、

全てがハッピーな時は、難しそうです。

逆に、ストレスを感じている時、

生き苦しさを感じている時、

苦悩や葛藤を抱えている時、

困難を抱えている時などの方が

(苦しい時期ですが)適していると思います。

このような苦しい時期の方が

自分の中の怖れにアクセスしやすいからです。

満ち足りている時だと、

そもそも自分の中の怖れと向き合う理由がなく、

うまく怖れにアクセスできません。

ですが、苦しい時は

誰しも大なり小なり、混乱しています。

その状態では、何が怖れなのか?

悪口なのか?愚痴なのか?八つ当たりなのか?

ごちゃ混ぜにになっているので、よく分かりません。

ですから、まず最初にすべきは

整理です。

あなたの苦しみを整理しましょう。

どんな苦しみがあるのか?

何が苦しいのか?

何に憤っているのか?

何に傷ついているのか?

何を求めていたのか?など、

全てごちゃ混ぜの状態で一人で憤慨せずに、

まずしっかり整理しましょう。

さて、どうやって整理するのか?

私がよく推奨するやり方は二つあります。

そのうちの一つを、今回は紹介します。

それは

書くことです。

今自分が感じていることを

文字にして書き出すのです。

単純に思えますが、

これは日記ではありません。

自分の心の整理のための記録です。

今あなたが感じていることを

あなたの頭の中にある感情、感覚、

疑問、怒り、迷いなどを言葉にして

全て文字にして書き出してください。

それが一言二言、五文字十文字、

ということは無いはずです。

むしろ、ノートが必要でしょう。

媒体はなんでも構いません。

デジタルが好きな人は、

携帯電話のメモや、パソコンに記録するもよし、

アナログが好きな人は、

鉛筆、ボールペンでノートに書くもよしです。

ただし、あなたの中の想いを

残さず書いていただく必要があります。

つまり、あまり他人には見せたく無い、

聞かせたく無いような言葉も

書き出す必要があります。

これは、お綺麗にまとった日記では無いのです。

あなたの切迫した苦悩を書き出す場なのです。

したがって、あまり人の目につかない秘密のノート、

などを私は推奨します。

ちなみに、私個人の好みで申し上げると、

万年筆を使って、ノートに気持ちを書き出す手法に

非常に効果を感じます。

なぜかは分かりません。

私と万年筆の相性かも知れませんが、

そういえば、昔の文豪や作詞家など、

言葉を扱う人の多くは万年筆を使っていましたね。

私の感覚ですと、万年筆は傑出して

自分の中の感情を湧き上がらせ、その感情を

言葉に乗せてゆくのに長けた筆記用具だと思います。

(その分、インク補充や洗浄など手間もかかりますが)

かくして、自分の想うところを余すことなく

文字に書き出してみてください。

まず何が起きるか。

自分の中の感情を文字に転写したのですから、

その感情が一時的に移動しました。

それよって自分の中に、少しのスペース、

すなわち余裕が生まれているはずです。

少しは、落ち着いているはずです。

また、自分で書いている内容をご覧ください。

文字にしてゆく過程で、意外にも

自分で思ってもみなかった自分の気持ちや

感情、疑問や怒りなどが出てくることが多いです。

自分の文字を読み返してみるのも良いですし、

気持ちを書き綴っている最中にすでに

「自分の知られざる感情」に気づく人もいます。

まずここに「怖れの発見」のチャンスがあります。

またこの手法に慣れてくると、

自分で自分と会話するようになる人もいます。

自分で疑問や不満を投げかけ、自分で答え、

自然と自分が鎮まっていくかのような、

自分と自分のやりとりが文字で記録されている

という人もいます。かなり上級者でしょう。

勿論ですが、

この手法でうまく行かない人もいます。

その人は、

うまく言葉が書き綴れない、

自分の気持ちに集中できない、分からない、

集中できない環境で書こうとしている、

実施回数が足りない、

懐疑的な状態で書いている、

この作業との相性が合わない、

などの理由が考えられます。

しかし、1回2回、1日2日で

大きな効果を望むのは過剰な期待です。

まずは2週間、10日、1ヶ月、3ヶ月の

継続を目指しましょう。

頻度よりも、継続している期間の方が大切ですが、

最初のうちは、毎日〜1週間に1回程度の頻度で

気持ちを書き出してみてはいかがでしょうか?

とにかく、苦しくなったら即書くのです。

それでもしっくり来ない人もいます。

その場合は、別の手法を試しましょう。

この手法で何らかの効果があった人でも

別の手法と併用しましょう。

それについては、次回にいたします。

ただ思いついたことを書くだけで

怖れとの対話になるのか?と聞かれれば

答えはノーですが、この手法をうまく活用すれば

怖れとの対話の一部になることも事実です。

ただし、自分の中の怖れとの対話において

自分独りで始めて、自分独りで完結する人は

ほとんど居ません。

自分の中の怖れと対話するには、

いろんな形で、誰かの手助けを借りたり、

どこかで何かのヒントを貰ったりすることが

多分にあると思います。

むしろ、自分のこととは言え、

全て独りで背負い込んで

解決しようとしないことの方が大切です。

どんな人にも、その人を助けてくれる環境が

大なり小なりあります。

ただ、それに気づくかどうかの差です。

自分のことなので、他人任せにせず、

他人事のようにならず、原則は自分主導で。

それでも、他人の助けも頂きましょう。

怖れとの対話。

今回は、自分一人でできる作業でしたが、

次回は、人の手を借りる作業に言及します。