医師 黒木 弘明

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二〇二四年 四月二〇日(土)

綴りごと 想いごと

奇跡を活用する

私たち人間は、

ものすごく繊細なバランスで成り立ってます。

たとえば、

ちょっと脚を痛めると歩けない。

ちょっと頭が痛いと立てなくなる。

ちょっとみぞおちが痛いと何も出来なくなってしまうし、

悩みごとがあるだけでも眠れなくなります。


もっとバランスを崩すと

身体が痛くて息をするのも辛い、

どの姿勢でも苦しい、

どうすれば良くなるかも分からない、

まるで生きているのか死んでいるのか分からない状態が

数時間、数日続くこともあります。

まるで生きながら死を与えられたような経験を

私はこれまでに一度となく、もう十回以上、

いえ、二十回近く体験してきました。


そんな私は痛いほど感じます。

何事もないような普通の状態は、

無数の調和の上に成り立つ奇跡なのだと。

普通という奇跡。

我々は言葉として、

奇跡のことを普通と呼んでいるだけで、

それが奇跡的に連続する日が

多くの人に見られるだけのことで、

普通とは決して当たり前ではないのです。


昨今は、生きる意味を探す人も大勢居られますが、

何度も死んだような体験をした私はむしろ

『自分が生きているという奇跡を

大いに活用すべし』と感じます。

奇跡を何に活用するかは、

もちろん本人の自由な選択で良いと思っています。


今日、不自由なく動くことができる人、

食べることが苦しくない人、

休んで眠ることができる人は、

奇跡の中で生きているのです。

そのことをお忘れなく。