医師 黒木 弘明

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二〇二四年 五月一六日(木)

綴りごと 想いごと

再び輝く

 

僕は、心が重たくなってしまった人のケアをしている。

 

 

投薬ではなく、お話しを聴きながら、
活路を見出すのが僕のやり方で、
クリニックや病院には所属していないので、
少しアクセスしにくいかも知れない。

 

 

そんな僕が思うのは、
現代社会の中で心が重くなったり、
心が疲れてしまう人は、
そもそも素敵な人である、ということ。

 

 

何らかの理由で彼らは、
この社会、この地球に疲弊してしまい、
元来持っている心の輝きが鈍くなって、
苦しんでいるものと解釈している。

 

 

もちろん、場合によっては
心の疲弊が根深いがために
時間を要することもあるが、
むしろそれが普通だと考えている。

 

 

長い間、心が陰ってしまう状態を闇、
つまり病み・病気とみなされるケースも
沢山あるし、その場合は医療機関からの
投薬が必要なのかも知れないけれど、
どんな内服治療下にあっても、
十分、十二分に本人の話を聴くことは、
内服と同じか、あるいはそれ以上に
大切なので、欠かしてはいけないと考える。

 

 

昨今の医療機関では、残念なことに
十分な傾聴と対話が不足しがちなので、
僕はそれを微力ながら補うつもりで、
クライアントさんのお話しを聴き続ける。
分単位ではない。時間単位で聴く。
お話を聴き続けながら、僕の方も
感じたことを喋る。それが双方向の
コミュニケーションだから。

 

 

いずれにしても僕は、
目の前の人が元来持っている、
心の輝きを取り戻すことを念頭に、
お話しを聴き続けるし、大半の場合、
その人が話す内容の中に重要な答え、
またはヒントが必ずある。
だから僕の目の前に病人は居ない。

 

 

僕の所にやってくるのは、
心の輝きを取り戻そうとする、
素敵な人だけだ。みんな自分の心を
再び輝かせるための練習をしている。

 

 

そういうつもりで、そういうイメージで
今までずっと話を聴いてきた。
本人が自分を信じられない時は、
僕が本人を信じる。本人に成り代わって
全てを背負うことはできないが、
本人の可能性を僕が信じることはできる。

 

 

もちろんこれには、
手間暇もお金もかかるが、それが
お互いに投入したエネルギーだから、
お互いに胸襟を開いて話し合った分、
エネルギーは高まり、蓄積され、
結果的にクライアントさんの心が
ある日突然、再び輝き始めることが、
僕の目の前では多く見られる。