医師 黒木 弘明

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二〇二四年 四月二六日(金)

綴りごと 想いごと

つっかえ棒

戸が開かないように、物が倒れないように
支えるのが、つっかえ棒ですが
言葉のつっかえ棒があります。


本人は自分の心が倒れないように
つっかえ棒として
ある言葉を使っています。


つっかえ棒なので
その言葉は外には出てきません。


しかし、その言葉を心の内で
ずっと抱えている為に
心が開かない場合もあります。


もっと言うと、本人は
その言葉を忘れ去っています。
だから頭の中に思い浮かびもしません。


なんらかのご事情で、
これらの言葉を心の内にずっと
溜め込んでしまっている。


心が貝のように閉じている。
一見、平静に見えますが
内心、とても苦しいのです。


その苦しさを忙しい仕事と慌しい生活で
忘れようとするのは自己防衛ですが、
忘れるのはアタマだけで
息苦しさはココロに残ります。


だから言葉を
あなどってはいけません。


本当は表現したかったこと
本当は言葉にしたかったこと
私はこう感じてたんだよ
私はこうなんだよ


ごめんなさい
ありがとう
怖かった
悲しかった
嬉しかった


本当に発出すべき言葉を
いつのまにか忘れているのは
まるで自分の名前を
忘れてしまっているようなものです。


さぁ、言葉を遣えるうちに
もう一度、本当に遣いたかった言葉を
本当に表現したかった言葉を
探しにゆきましょう。


相手に分かってもらえるかどうか
なんて関係ないのです。
自分を分かってあげる作業なのです。


長年の言葉のつっかえ棒は
自分一人で探しても
全く見つからないことがあります。


そんな人が私の目の前に来た時は
私がその人の心の中で見つけた
言葉の破片を拾い集めて見せてあげます。


こんな言葉のかけらが
あなたの中に落ちてましたよ。


これですか?
あなたが探してた言葉は?


あなたの心の隅っこで、こんな言葉が
ほこりかぶって落ちてましたが
心につっかえていたのは、これですか?


なんだか探知機が反応するのですが
あなたの心のあの辺にとても大きな言葉が
埋まっているようなのですが
掘り上げてみたらどうですか?


探していた言葉が見つかった時は
とてもス〜っとします。
心に再び風が通ります。


しかしその快感だけで満足して、
そのままにしてたら
また同じことですから


つっかえていた言葉を探す手伝いは出来ますが、
その言葉を遣うのはご本人の持ち分。
助けとはキッカケにはなりますが
救いそのものにはならないのです。


だから
しっかり言葉を遣いましょう。
しっかり自分を表現しましょう。


その時あなたは魔法使いならぬ
言葉使いになります。
自分を癒す言葉使いです。
誰でもなれます。


あなたの中の言葉を探す勇気も
あなたを解き放つ言葉を遣う勇気も
あなたを救うのも、自分への愛。