苦悩の臭いと慈悲の匂い
秋の印象が有る銀杏も
実は真夏にはもう実っていて
あとはその日を待って控えている。
銀杏の晴れの舞台。
銀杏の最高潮はいつであろうか?
私は、たわわに実った銀杏が
台風の強風に煽られ地面に落下し
道ゆく人が顔をしかめるほどの
臭いを放つ時こそが
銀杏の最高の舞台ではないかと思う。
思えば我々も銀杏だ。
この地球に人間として舞い降りて
埋め込まれた脳という感情装置に
えらく難渋しながら己の顔をしかめたり
或いは、他人に顔をしかめられたり
各人が臭いを放ち、匂いを振りまき
季節を巡らせ生きているのだから。
我々が銀杏のように
苦悩の臭いを放つ時
慈悲の匂いを放つ時
我々は最高潮を迎えているのだろう。
苦悩も慈悲も
はたから見れば、ただの匂いで
大きく変わらないのかも知れないな。
苦悩の銀杏は実っとるか?
慈悲の銀杏は地面に落ちそうか?
急がずとも煽らずとも
やがて好き日に善きようになる。