医師 黒木 弘明

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二〇二五年 二月二〇日(木)

綴りごと 想いごと

苦悩の臭いと慈悲の匂い

 

 

秋の印象が有る銀杏も
実は真夏にはもう実っていて
あとはその日を待って控えている。

 

銀杏の晴れの舞台。
銀杏の最高潮はいつであろうか?

 

私は、たわわに実った銀杏が
台風の強風に煽られ地面に落下し
道ゆく人が顔をしかめるほどの
臭いを放つ時こそが
銀杏の最高の舞台ではないかと思う。

 

思えば我々も銀杏だ。
この地球に人間として舞い降りて
埋め込まれた脳という感情装置に
えらく難渋しながら己の顔をしかめたり
或いは、他人に顔をしかめられたり
各人が臭いを放ち、匂いを振りまき
季節を巡らせ生きているのだから。

 

我々が銀杏のように
苦悩の臭いを放つ時
慈悲の匂いを放つ時
我々は最高潮を迎えているのだろう。

 

苦悩も慈悲も
はたから見れば、ただの匂いで
大きく変わらないのかも知れないな。

 

苦悩の銀杏は実っとるか?
慈悲の銀杏は地面に落ちそうか?
急がずとも煽らずとも
やがて好き日に善きようになる。