医師 黒木 弘明

メニュー

二〇二二年 一一月二九日(火)

綴りごと 想いごと

背中を見せる

人を育てる手法として、

よく「背中を見せる」と言うが、

もし本当に背中を見せたいならば、

まず貴方が相手から見て

『背中が見える距離』に居なければ、それは成立しない。


貴方が単に、貴方の広背筋とか
貴方の肩甲骨を見せたいだけなら
相手からそれが見える物理的な距離に居れば良い。



しかし、それ以上に貴方が
自分の行動、生き方、在り方、さらに
幸せの扉の開け方を伝えたいのならば、
心理的な距離を意識することを勧める。



心理的に遠い距離とは、
相手が貴方のことを怖がったり、
尊敬できなかったりする時のことだ。
躾と称して相手を畏怖させるほど、
心理的な距離は遠くなり、貴方の背中は
ますます見えなくなる。



心理的に近しい距離というのは、
相手にお世辞を使うことでも
無目的に甘やかすことでも、
モノや金を使って従属させることでもない。



相手を尊敬すること
それが心理的に近しい距離を生む。



たとえ乳幼児であろうと、児童であろうと、
新入社員であろうとも、中年であろうと、
関係ない。相手に敬意を払うのである。



相手の素晴らしい所に着目する。
自分には真似できないような
相手の特異点を見つけるのだ。



もしもそれが見つからない場合や、
自分が全てにおいて相手に勝ると感じる場合、
貴方の自分育ては、ゼロ点である。



相手をリスペクトしていなければ
相手に背中を見せることなど出来ない。
貴方が相手を心からリスペクトして、
相手と心理的に近しい距離になった時はじめて
相手に貴方の背中が見える。



そして貴方が人生の扉を、楽しそうに
開けてゆく様子を相手に見せることで
人生の味わい方を伝えてゆくことができる。



指示、命令、躾、規則遵守…
そればかりいくら教えても
人生の味わい方が分からない子が増えるだけ。
所属するチームの中だけで挨拶をして、町の中で
礼儀正しくできない子を増やしても仕方ない。



社会の厳しさなど教える必要などない。
放っておいても自分で感じる時が来る。
意地の悪い洗礼はトラウマティックな洗脳になる。



大人たちよ、本当に大人なら、
誰であろうと相手をリスペクトして
しっかり背中を見せよ。
命を謳歌する姿を見せよ。



もしもそれが難しいのなら、
プライドを手放して、素直になって、
今一度、自分を育て直そうではないか。
色んな人の手を借りて、自分を育て直そう。
それは恥ずかしいことでも何でもない。
むしろ勇敢な背中として映ることだろう。



そんな素直な人間の背中の方が
これから花開こうとする子たちには
はっきり言って見えやすい。



人生の恐ろしさを植え付けるのではなく
人生が如何に美しいものであるか、
人間が如何に素晴らしいものであるか、
その命がどれほど貴重なものかを伝えよう。



自分と向き合い、自分を育て、
自分の中の怖れの扉を開けてゆけば
人生を味わうことができることを証明し、
人生には希望があると言う真実を見せよう。