医師 黒木 弘明

メニュー

二〇一八年 一二月一〇日(月)

綴りごと 想いごと

金継ぎ

 

昔、とある教育者に「あんたらの仕事は、病気になった人を元通りに戻すことや」と言われたことがありますが、絶対に違うのです。



その人が言う「元通りに戻す」と言うのは、病気という貴重な体験をする前の状態に戻す、つまり、その体験をしなかったかのように戻す、と言う意味でした。



もしそれを望むなら、タイム・マシーンの研究開発に多額の寄付をされるか?アニメキャラクターのドクター・ストレンジが持っていたタイム・ストーンを手に入れるか?どちらかです。そこに僕の出番はないです。



僕の仕事は『金継ぎ』のお手伝いです。
金継ぎ・・・割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法



たとえ心が折れても、欠けても、
その体験を、『その後の人生の糧(発見・教訓・深化・変化のきっかけ・エネルギー・モチベーションなど)』に繋げる作業のお手伝い。あるいは、その体験を活かして『その人の味(素敵な個性の一部)』に繋げる作業のお手伝い。
それが僕の仕事です。



人生100年時代が近づいている、と言われています。ホンマかいな?と思うのですが、少なくとも男女共に日本人の平均寿命が80歳以上となった今、短くない人生の途中で、一度も心が折れたり、欠けたりしないなんて、まず無いと思います。



驚くほど繊細な人間という生き物として、この地球で人生を生きている僕らに必要なのは、タイム・マシーンやタイム・ストーンではなくて、実は『金継ぎ』ではなかろうかと、僕は密かに思うのです。



ちなみに、『心の金継ぎ』の接着剤として必要なのものは、漆ではなく『愛』です。そして『心の金継ぎ』の素晴らしい所は、破損前の器よりも大きくなることが可能である、ということです。