医師 黒木 弘明

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二〇二五年 一一月一〇日(月)

綴りごと 想いごと

心の生存者

 

 

自分と向き合っている方々には
少なからず、お心当たりが
お有りと思うのですが

 

 

自分の中に真逆の意見を持つ自分が
併存していることに気づく時がある
ということは、ございませんか?

 

 

ある時は、物凄く嫌いだ!と感じるのに
しばらくすると、それが恋しくなったり
ある時は、物凄く好きだった物に対して
しばらくすると、嫌悪感を覚えたり。
それを繰り返したり。

 

 

もうちょっと具体的に例を挙げると
「あの人とはもうやっていけない!」
と強く思ったのに、数ヶ月もすると
「あの人は可哀想な人だから助けたい」
と言っていたりするようなこと。

 

 

特に、対象が親であったり、
パートナーであったり、仕事や会社で
あったりすることが多いですが

 

 

「相手にとって良い人間だと思われたい」
という願望が周期的に出てきては、
相手とすれ違うので傷つき、落ち込み、
その相手を恨んだりするのだけども、
また次の周期が来ると、その相手に
認められたくなってしまうような

 

 

そんな現象はございませんか?

 

 

私見に過ぎませんが、これは
自分の中の色んな心・様々な人格が
バラバラの状態なのではないかな?
と考えます。(多重人格とは言いません)

 

 

私たちが何かに傷ついた時、
リアルな記憶を保ち続けるのは
辛いので、脳は自分に都合のよい記憶に
加工して、何処かに記憶を格納します。

 

 

この時、事実関係についての記憶は
多少、歪みます。というか歪ませて
自分が傷つかない記憶に加工してます。こうして「一時的に忘れる」のです。

 

 

ですが、加工された記憶を信じる自分と
真実に近い記憶を有している自分が
自分の中に共存しているので、
なかなか自分の心が噛み合いません。

 

 

この心の噛み合わせのズレは
やがて体調に現れることが多いです。

 

 

元気な時もあるのだけれど
定期的な落ち込みや倦怠感、
元気過ぎる状態と落ち込みの落差、
原因のはっきりしない体調不良や
頭痛・腰痛・腹痛などの激しい症状が、
それに該当すると私は考えています。

 

 

これらの症状がある時は
あまり自覚はないかも知れませんが、
まだ癒えていない自分が
心の中に居る可能性が高いです。

 

 

ご本人は傷ついた自分の存在に
薄っすらと気づいていたとしても、
やはり辛過ぎて、その自分の存在を
認めることも、向き合うことも、
許すことも、かなり難しいので、
バラバラの心のまま毎日を生きて、
周期的な症状に悩まされるケースが
私が見たところ、とても多いです。

 

 

なぜ向き合うのが辛いのか?
と言えば

 

 

自分が悪いと思っている
からではありませんか?

 

 

心がバラバラなのは
悪いことではないのですよ。

 

 

傷ついたことは
貴方が悪い訳ではないのですよ。

 

 

ただ傷ついた自分をそのままにして
自分が苦しんでいるのに
それを見て見ぬふりをするのは
ちょっと悲しいことかも知れません。

 

 

すぐには自分と向き合えないでしょう。
立ち上がるには時間がかかるでしょう。
場合によっては一生に近い時間を
要する人も居るでしょう。

 

 

生きている間はチャンスがありますが、
自分独りで心の噛み合わせを治すには
ブッダのような生活が必要になるので
現代の日常生活の中で心を治すには
もう一歩踏み出して、
ご縁ある協力者を探しましょう。

 

 

仕事を頑張るとか
家のことを頑張るとか
それと心は別物ですからね。
それはそれ、心は心。

 

 

どうか貴方の心が
噛み合いますように。
どうか貴方の中の人格が
統合されてゆきますように。

 

 

貴方が心の生存者で
在りますように。