医師 黒木 弘明

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二〇二一年 三月一日(月)

綴りごと 想いごと

バレンタインの贈り物

生きることに臆病な私の家には、ギターの他にも、沢山のテディベアと観葉植物 がある。ご存知ないかも知れないが、どれも置いてあるだけでは駄目で、心を込めた世話が必要である。彼らはオブジェではなく友人だからだ。従って週末の朝は、植物のお世話をしている。


お世話とは、種類や属性を調べて知ったような気になることではなく、その個体に実際に見て触れて、その個性を研究し、受け容れ、付き合うことである。たとえば店頭で「この種類は水は少なくて良いですよ」と言われた植物であっても、実際に一緒に暮らしてみると、案外に頻繁に水が必要だったりする。個体によっては、季節に応じて置き場を変える必要があったり、中には休眠しているものも我が家にはいる。みんな個性がある。


さて、君子蘭 である。これは2年前に亡くなった最愛の祖母が育てていた株を私が引き継ぎ育てているものだ。祖母が存命中の今から2、3年ほど前に植え替えたのだが、その後珍しく花が咲かない日々が続いた。


お世話をしているのに花が咲かないのは、きっと天国の祖母が(喪失感に暮れる)私を心配しているからではないか?と思った。もちろん祖母に心配をかけたくはなかったのだが、祖母の存在感の余りの大きさに、私の心にそれはそれは大きな穴が空いてしまったことは、否定できない事実なので、やむを得なかった。


今朝もいつものように植物たちのを世話していると、不意に君子蘭の蕾 と出逢うことができた。天国の祖母も少し安心したのであろうか。それとも祖母が私を喜ばせようとしてくれたのか。もしくは祖母が私を応援してくれているのか。いずれにしても嬉しい出来事だった。


明日はバレンタイン・デーで、明後日は祖母の命日である。この君子蘭の蕾を、私は祖母からのバレンタイン・プレゼントだと思った。そう考えるだけでもとても嬉しい。そして大切に花を咲かせたい。もしもプレゼントのお返しができるとすれば、それは他ならぬ私が笑顔で、活き活きと、自分を受け止めて日々を生きることであろう。